キミの風を感じて

練習メニューの組み方やらトレーニング方やら細かいチェックと横やりが入る。



そのわりに関心薄いんだよな、この人。


俺が低迷してるのを、自分のせいにされてるかもしれないってのに。




「逃げちゃおうとか思わないの?」


不意に訊かれた。


「え?」


「俺なら逃げ出したくなるなぁ。記録を出すのが大前提なんて世界」


吉崎は笑って言う。




「逃げようとしたけど」


「無理だった?」


「いや、なんだかバカバカしくなって開き直れたっつーか……」


「はは、強いのな」




強くは……ない。
そうありたいとは思うけど。




「まー、せっかくだし全国レベルの空気でも味わってくればいいさ」



叱咤激励などしないこいつのこーゆー関心の低さに、俺はずいぶん救われてるのかもしれない。


< 69 / 375 >

この作品をシェア

pagetop