キミの風を感じて
校舎に戻っていく吉崎の背中を横目に、部室へ引きあげながら、
あの頃の――
押しつぶされそうだった自分を思い出していた。
あの頃――
新人戦で好タイムを出したあの夏の終わり。
もちろん記録はうれしかったし、注目されるのだって誇らしかった。
ただ期待に応えなきゃって、必要以上に力が入っていたんだと思う。
『もっと速くなれるよ』って、フォームのことでいろんな人にアドバイスされて、そのひとつひとつを注意して走るように心がけた。
でも全然しっくりとはいかなくて
気がついたら、自分が元々どう走っていたのかもわかんなくなっていた……。
体で覚えていたフォームが微妙に崩れて、それを直そうとするとまた別のところに変な力が入る。
昨日よりも今日
今日よりも明日
確実にタイムが落ちてきてるのに、いつもいつも注目されている。