キミの風を感じて
見られてるんだからぶざまな走りは見せられないって……初めて、走るのが怖くなった。
『あいつはもうダメだ』と誰かにささやかれるのが怖かった。
だんだんと部活も休みがちになり、もう陸上をあきらめようかとさえ考えるようになってたっけ……。
そんな頃に体育祭があったんだ。
進行係だった俺はネットに絡まった立木さんを救出に向かい、彼女と出会った。
あの日――。
ネットに絡まった立木さんの髪はもつれちまってなかなかはずれなくて、レースは中断するし時間は押すしで大変だったんだ。
手の中をスルスルと逃げてしまうようなきれいな髪を、ブチッと引きちぎるのはためらわれて、本気でオタオタしたのを覚えている。
続いて飛んできた進行係の先輩に、
『何やってんのよ』って、えらく怒られたっけ。