キミの風を感じて
* * *
立木さんの息があがってきたので少し休憩をはさむ。
荷物の置いてあるベンチに戻り、タオルで汗をぬぐった。
立木さんがベンチの端っこにちょこんと座る。
ここはやっぱり……。
俺も何気ないように腰を下ろした。
金網のフェンスを背に、並んで座る俺と彼女との距離は1メートルってとこか。
足元のカバンからペットボトルの水を出して、立木さんがポソッと訊いた。
「飲んでいい?」
「あ、うん」
キャップを開けて目を閉じ、水を飲む横顔。
コクコクと上下する白い喉元に、汗が一筋ツーッと流れていく。
…………。
ぼーっと見とれている自分に気づき、ハッとした。
バ、バカ、不謹慎だぞ、俺。
その瞬間、こっちを向いた大きな瞳と目が合った。
「飲む?」
「え?」
「水」
水なら持ってるくせに思わずうなずいていた。