キミの風を感じて
放課後の陸上部の練習も、加島くんはがんばってるようだ。
朝練ではフルスピードで走ることなんて、まずないけれど
運が良ければ下校のとき、トラックを全力疾走する彼の姿が金網越しに見られる。
本気で走ってるときの加島くんは、いつもの冷静で淡々とした印象とはガラッと変わって、すごい迫力だ。
そしてすごく速い。
真剣な表情。
力強い足運び。
風になびく髪。
初めてその姿を見たとき、なぜか言葉が出なかった。
ただただ息をのんで見つめていた。
「おー、カッコいいね」
横でユメちゃんがそうささやいたっけ。