キミの風を感じて

そんな加島くんも教室にいるときは、やっぱりただの無愛想な陸上オタクだ。


彼のカバンの中にはいつも陸上雑誌が突っ込まれていて、休み時間にはよくひとりでそのページをめくっている。




わたしたちがファッション誌を見るような感覚なのかなぁ?


そ―ゆー本を無心に見てるときの彼は、子供みたいでちょっと可愛いんだ。




「よく見てるよね」


今日もそんな彼を確認中に、となりの席からユメちゃんが言った。


「でしょ? いつも見てるよね、陸上の本。おもしろいのかなぁ、あんなの読んで」


どの世界にもオタクっているんだね、って答えると、ユメちゃんがあきれた声を出した。




「そうじゃなくて」


「ん?」


「紗百が加島くんのことをよく見てるなぁと思って」


なんてクスクス笑う。




は?


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