キミの風を感じて
「陸上なんて基本個人競技だし、陸部もマイペースなやつらの集団だけど、今の部はいい感じにまとまってるんだ。お前にしたらちっぽけに見えるだろうけど、みんなそれぞれの目標を掲げて前向きに取り組んでいる。
そういうの全部、吉崎先生の力だからな。お前はそれをメチャクチャにする気か?」
「そんなつもりは」
「つもりはなくても、結果そうなるんだよ」
「俺、…………」
いつも冷静な加島くんが言葉に詰まった。
「加島、お前ひとりのために俺たちはガマンしなきゃなんないのか? 俺たちの部がぶっ壊されるのを黙って見てろってか?
上回らないにしてもベストに近いタイムで走れよ。そうすれば先生の力量だって認められるんだ」
そんなの……出そうと思って出せるタイムじゃないでしょ? 何言ってるの、この人。
だけど福本さんはもっとひどい言葉を投げた。
「出来なければ、よそへ行けば?」