キミの風を感じて

「え?」


「あるんだろ? 私立の強豪校から引き抜きの話。『学費免除するからうちに来てくれ』って」


淡々とした口調に戻って福本さんは言った。




「お前は俺たちとは目標が違う。素質だって才能だってあるんだろ?

自分を高めたければそういう学校へ行けばいい。施設も指導者も一流だ。スランプになったって今何をすればいいのかちゃんと教えてくれる」


口調は淡々としているけれど、加島くんに向けられる目の力はむしろ強くなっていた。




「なぁ加島、俺だって中高と短距離をやってきた人間だ。もし俺にお前の足があったなら、迷わずそういう世界に飛び込んでいく。自分がどこまでやれるのか可能性を試してみたい。

お前はどうなの? 毎朝欠かさず続けてる自主トレなんて、ただの自己満足なんじゃないのか? やったつもりになってるだけだろ?」


「…………」


「逃げてんじゃねーよ。マジむかつく」


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