キミの風を感じて
言いたいことだけぶちまけて、福本さんは去っていった。
3年生の校舎へ向かうその背中を見送りながら、加島くんはぼんやりと突っ立っている。
じっと……動かないまま。
「あの、大丈夫……?」
そっと声をかけたら、やっとわたしの存在を思い出したのか、加島くんがこっちを向いた。
黒いきれいな瞳が、一瞬戸惑うように揺れて
とても……哀しい色に見えた。
「誰、あの人?」
「陸部のキャプテン。尊敬してる」
ポソッとつぶやく声が少しかすれて聞こえる。
「自己満……か。言われちゃったな」
力なくこぼれた言葉が胸を締めつけた。
「そんなことないよっ! 加島くんはがんばってる。ちゃんとやってるよ!」
練習中の彼の苦しげな表情が目に浮かんでくる。
汗も息づかいも真剣な目も……。
加島くんはいっぱい努力してるもん。