災厄の魔女

箱の中から姿を表した右手に集中する視線。


その手の中を目にした瞬間、皆一斉に驚愕し顔色は真っ青となる。


と言うのも、鷲掴みにされた沢山の紙が彼の右手には握られていたからだ。




 「ハハッ、冗談冗談」


反応を楽しむ彼は鷲掴みにしていた紙をパラパラと落としてゆき、握られるのは一枚の紙切れのみとなる。


二つに折られたその紙切れをヒラヒラと揺らしてみせる要。


一同それに釘付けとなる中、彼はそっとそれを開き覗き見るとふっと嫌みに微笑んだ。




 「遙翔く~ん!御國 遙翔く~ん!」


その紙に書かれた名前を口にする。


そこに書かれた学生の名を。
ギルドに招き入れる者の名を。
誰よりも不幸で運の無い者の名を。


大声で楽しそうに、にやけて嬉しそうに、要は何度もそこに書かれた名を呼んだ。






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