災厄の魔女
「はぁ!?」
自分には無関係だと決めつけ怠けていた遙翔。
ホール中に何度も響く自らの名前を耳に、壁に背を預けていた彼は反射的に身を起こす。
顔を上げた瞬間、名を呼ぶ要と目が合ったような気が…否、確実に此方を見て名を呼んでいる彼とバッチリ目が合った。
「ちょっ、ちょっと待……」
学生達に押されステージへと追いやられてしまう遙翔。
止めろと言っても止める気のない学生達。
人事だからと言って無責任だ。
前へ前へと進む遙翔は独り思う。
拒否権だってある筈だと。
取り消してもらおう、この取引。
使い物にならないから他の人物を選ぶべきだと言いくるめればいい。
きっとわかってくれる筈だ。
きっと彼なら…
否どうだろう…
このギルド長、話が分かる人物では無さそうだ。
彼を説得できる自身はないが…
「…あの、この話――ぬわっ!」
不安を抱きつつも意を決した遙翔は階段を登り終えたところで口火を切る。
しかし彼はほぼ何も言えぬまま、何かに足を引っ掛けステージの上で派手に転倒した。
「ってて……ん?」
ついた右手の下にはA4サイズの紙切れが一枚。
何だこれはと首を傾げそれを拾い上げるが、サッとそれは奪われてしまった。