災厄の魔女

 「契約成立なのだ!」


 「おめでとう!これで君も我がギルドの一員だ!」


 「……へ?」


奪った紙切れに目を通したリッカは喜び手を叩き、それに便乗する要はにこやかに遙翔の背をバシバシ叩く。


何がなんだか分からない遙翔は不機嫌そうに2人を見上げると、ジャーンという効果音がついても可笑しくない程堂々と要は紙切れを遙翔の目の前に突き出した。


数ミリ先のそれをよく見ると、そこには『ギルド加盟契約書』と書かれている。


こんな契約書サインした覚えはない。


しかし其処にははっきりと、承諾の印に拇印が押印されている。



はっとした遙翔は自らの親指を見て驚愕。


それは朱肉に触れたように赤く染まっていたからだ。




 「嘘だろ……」


先程転び紙切れに手をついた際ついたであろう拇印。



だがこれは事故だ。
決して承諾の意で押した訳ではない。


この2人が仕込んだ罠。
詐欺だ。
偽証だ。
でっちあげだ。



証人はこの場にいる全ての人物。


打開策を見つけた遙翔は胸を張って立ち上がるが、その一筋の希望は無惨にも崩れ去る。


何故か増してゆく拍手の音。


振り向けば学生達が、講師達が、ギルド長が、此処に居る全ての者達が祝福の音を遙翔へと送っていた。







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