災厄の魔女
口の中に押し込んだ肉の塊をゴクリと飲み込んだ所で、店の扉は乱暴に開かれた。
「ニャハハッ!珠里奈ー酒ー!」
「まったく…いい加減にして下さいよ貴女は……」
入って来たのは男女二人組。
既に泥酔状態の女と、彼女を介抱する男である。
「あらあらシンリ、飲み過ぎじゃない?」
そんな事を言いながらもグラス並々に注がれたアルコールを差し出す珠里奈。
それを女は一気に飲み干した。
「止めて下さい珠里奈さん。これ以上は僕も面倒見きれませんよ」
「面倒だぁ?何時も面倒見てやってるのは、ヒック…私の方だろがぁ!」
隣でグッタリとする男の頬を抓るシンリと呼ばれた女。
彼女は更に彼の頭を乱暴に叩く。
「あのー、大変盛り上がってる所悪いんだが、少しいいかなお二人さん」
知り合いなのだろうか、珈琲に角砂糖を沈ませた要はカウンター席に座る2人に声をかける。
「何だ居たのかバカナメ。他のギルド長に消されれば良かったのに」
「ハハッ…もし消されたら一番にお前を呪ってやるよ、シンリ」
振り向く女は毒を吐き、それに対抗するように要は引きつった笑みを浮かべながらスプーンをねじ曲げた。
「それで何です?用があるんですよね、カナメ。まぁ、大方予想は出来ていますが」
睨み合う2人を止めるように話を切り出す男。
要に問い掛けながら彼は遙翔へと視線を向けるのだった。