災厄の魔女
「此奴の事はバカナメって呼んで良いから。へと、ハレ…ん?ハルだっけ?」
要の肩に腕を回し言うシンリはハイテンション。
「なぁ、此奴消して良いかな?否良いよな?良いに決まってる。よしタクミ、俺が許すから此奴を消してくれ」
ニコニコしながら言う要だが、目は決して笑っていない。
ふと目が合ったタクミは顔をひきつらせ苦笑い。
「残念ながらそれは無理ですね。その権利放棄させてもらいますよ」
慣れているのか上手く逃げるタクミ。
要は舌を打ち何か独り低く呟くのだった。
「今日は楽しいな!なぁリッカ!」
「…ふにゅ~」
「ふ、ふにゅ~?」
頬を赤く染め高らかに笑うシンリはリッカに話をふるが、彼女の反応は何処か変だ。
「ちょっ、何飲んでんのリッカ!子供がお酒なんか飲んじゃ駄目でしょ!」
よく見ると、ストローの挿されたグラスに注がれるのは色鮮やかな赤ワイン。
不意にシンリが置いたそれをジュースだと勘違いし飲んでしまったようだ。
「ニャハハッ!その歳で酒の美味さがわかるとは、相変わらず凄いなリッカは!」
「否シンリ、今は誉めてる場合ではないと……」
上機嫌のシンリは目を回すリッカの前に酒を差し出し進めるが、タクミはそれを引っ込める。
しかしシンリはそれを引き戻し、タクミもそれを奪い返す。
「もう嫌だ…俺にはもう手に負えない……て事で頼んだぞ、ハル!」
「は?」
肩を叩かれ振り向けば、親指を突き立てる要の姿。
何が頼んだだと問い質そうにも、彼の姿は一瞬にしてそこから消えた。
「ニャハハハッ!」
「まったく……」
「き、気持ち悪いのだ……」
壊れたように笑い続けるシンリに呆れるタクミ。
グッタリするリッカは青白い顔をし口を押さえる。
そんな3人を任されたハルは溜め息を吐く。
まぁ、彼がこの後どうなったかは言わないでおこう。
否、どうなったかは言うまでもないが正しいか。