災厄の魔女
平凡な日常が奪われたあの日から数日が経過し、大分このギルドにも慣れてきた。
来る依頼は何時も小さくどうでもいい簡単な仕事ばかり。
使っているかもわからない屋敷の掃除に人も来ない祭の準備。
凶暴な動物の世話に真夜中の見回り。
低級ギルドである以上、そんなに大それた依頼は来る事は無いようだ。
「おはよう、ハル。今日は最高な1日だな!」
「お、おはよう……」
朝っぱらから何時も以上にハイテンションな要はハルの背中をバシバシ叩く。
ハルはそんな彼から逃げながら挨拶を返すのだった。
「気のせいか、何時にも増してテンションが可笑しくないか?」
爽やかに微笑み挨拶するタクミに問うハルは不審そうに要へと視線を送る。
当の本人はその視線に気づく事無く嬉しそうに鼻歌を歌う。
「あぁ、嬉しいんだきっと。今日帰って来るから」
「帰って来る?誰が?」
「残り1人のギルドメンバー、雅 大和(ミヤビ ヤマト)。あの要が一目置くお気に入りがね」
寝起きで眠そうなハルの質問に親切に答えるタクミはウインクをして見せた。