災厄の魔女
追い出されるようにして無理やりミヤビを迎えに向かわされたハル。
独り町中を歩き溜め息を吐く彼は雑木林へと向かっていた。
ミヤビは其処で迷っている筈だと、3人共に口を揃えて言っていたからだ。
あの口振りだと、以前其処で何度と無く迷っているのだろう。
「あぁ面倒くせぇ…っと……!?」
「!?」
愚痴を零していると突然何の前ぶりも無く木々の隙間から飛び出して来た何者か。
互いに瞬時に反応しぶつかるのを防ぐ。
「ごめんなさい。大丈夫?」
余りに突然だった為バランスを崩し尻餅をついたハル。
そんな彼に手を差し伸べたのは1人の少女。
青い髪には新緑の葉が絡んでいる。
「あぁ、ありがとう。君こそ大丈夫?」
「はい、平気です」
ふわりと微笑む彼女。
とても可愛らしい少女であった。
「あの、訊ねたい事があるんですが、『soleil』って言う喫茶店が何処にあるか知ってますか?」
「それならこの道を真っ直ぐ行った先の左手に」
「この先の左手……ありがとうございます」
喫茶店の客だろうかギルドの依頼人だろうか、soleilの場所を訊いた彼女はハルに礼を言い頭を下げる。
そして目的地へと歩き出した彼女。
その後ろ姿を見送るハルはふと気づく。
彼女は腰に剣を差している事に。
もしかしたらと思ったが、そんな筈が無いと諦める。
このギルドに居るメンバーだ。
あんな可愛い普通の常識人な訳が無い。
こんな時代に剣なんか持ち歩いてるなんて、絶対侍にでも憧れた変な男だ。
声をかけた瞬間斬りかかってきたらどうしよう…
少女を見送り雑木林へと足を踏み入れたハルは不安を胸に気だるそうにミヤビを探すのだった。