災厄の魔女
「帰ってきたなら帰ってきたで、そう連絡してくれたって良いじゃないか」
「そうでしたね。忘れてました」
口を尖らせ言うハルに対し、爽やかに微笑みかけ言うタクミ。
忘れてたって、貴方を一番頼りにしてたのに!
唯一の常識人だと思っていたのに!
なのに何、忘れてたって!
忘れてたって何なのさ!
「まったく……」
疲れたハルはぐたりと机に突っ伏した。
グラスに浮かぶ氷が溶け、カタリと音を立てるのを耳にし顔を横に向けると、見覚えのある人物の姿が目に映る。
「あ……」
目が合ったのは1人の少女。
今朝雑木林の前で出会したあの少女である。
朝からずっと今まで此処に居たのだろうか。
特に何も無いこの喫茶店で1日を潰すなんて、何か深い思い入れがあるのだろう。
「やっと戻って来たかハル。何処で何をしてたんだ。心配したじゃないか」
互いに頭を下げ合う2人の間に割って入ったのはカナメ。
相変わらずテンションは高めである。
「て事で紹介するよ。彼が新入りの御國 遙翔くん。凄腕の魔法遣いだから」
「嫌待て!何が凄腕だ!勘違いするような事を言うな!俺は全くの正反対、魔力もろくに使えないクズだよ!」
「フッ……クズだと…自分自らの事をクズだと……ハハハッ!」
店内に響く笑い声。
振り向くと、丸テーブルの上に腰掛けた女性が腹を抱えて笑っていた。