災厄の魔女
腰まで伸びたモカブラウンの柔らかな髪に白い肌。
長く細い脚を組み紅茶片手に妖艶に微笑む1人の女性。
彼女が皆の言うミヤビと言う人物なのだろうか。
だが、様子がおかしい。
女性の姿を目にした瞬間皆が一斉に立ち上がり、鋭い眼差しを彼女へと向けている。
「…何故此処に……」
「何故?決まってる。只の気紛れさ」
机の上から軽やかに降りた女性はカナメの言葉に応え紅茶をすする。
その姿を見つめるカナメはピリピリと緊迫した雰囲気を身に纏い、普段からは想像も出来ない程の変貌ぶりだった。
「いくら待っても誰一人来やしない。だからわざわざ此方から赴いてやったんじゃないか」
コツリとヒールの音を響かせ歩み寄って来る彼女。
一歩距離を縮めただけなのに、何か言いようの無い重い空気に触れ鳥肌が立ち背筋が凍る。
彼女の周りに漂う殺気に身体は危険信号をあげていた。
「…この……災厄の魔女め…!」
声を荒げたのは青い顔をしたシンリ。
魔法で作り上げた拳銃の引き金を震える指で引いていた。
鳴り響く銃声。
しかしその銃弾は女性の身体をすり抜け壁に突き刺さる。
「本気で殺しにきたかシンリ。だが、まだまだだ」
「!?かはっ!」
何が起きたのか、女性が嫌味に微笑んだ瞬間シンリは多量の血を吐いた。