災厄の魔女
「何だ遙翔その顔は。私の事を忘れてしまったとでも言うのか?」
女性の身に纏う言いようのない殺気に圧倒され、身動き1つ取れずに居たハル。
そんな彼の目の前に現れた女性は腰を曲げ顔を近づけてくる。
忘れた?
貴女を?
俺と貴女は顔見知りだと?
覚えは無い。
記憶に該当する人物も居ない。
以前何処かで出会しでもしたのか?
「防衛機制で記憶を抑圧したか。ならば思い出させてやろう、君の消し去りたい過去を」
「っ!?」
頭を掴み嫌味に微笑みかけてくる彼女。
抵抗しようにも身体は言う事をきいてはくれず、その手を払う事も、間近に迫る女性から身を離す事も不可能。
只されるがままの状態だった。
「私は災いをもたらし続ける災厄の魔女。12年前君の両親を殺した、君の憎むべき相手だ」
「!?」
耳元で囁かれた言葉で蘇る。
自ら封じ込めた過去が。
思い出したくも無い過去が。
両親を失ったあの日の記憶が、はっきりと鮮明に蘇る。