災厄の魔女
「可哀想に。そんな運命を背負わされているなんて」
「それはお互い様だろう……?」
他人事のように言う柴架に対し、顔色のさえないカナメは嫌味に笑ってみせる。
するとその態度に目を細める柴架は鼻で笑い立ち上がる。
「フンッ……良い暇つぶしもできた事だ。今日はこのまま退くとしよう。だがこれも気まぐれだ。次は無いと思え」
カナメと背中合わせに彼の背後に現れた柴架。
捕まえた黒蝶を灰へと変えた彼女はそう言い残すと風と共に姿を消した。
「ハァ……」
静まり返った店内、崩れ落ちるように膝を折るカナメは深く深く息を吐く。
額から流れ顎の先に溜まった汗はポタリと床に零れ落ちた。
「ったく…勘弁してくれよ……」
クシャリと乱暴に髪を掴み頭を抱えるカナメは疲れた顔で独り呟く。
瞳を閉じ、一度目一杯息を吸い深呼吸。
深く息を吐き終えると瞳を開き立ち上がる。
「さて、これからが問題だ」
腕を組み考えるカナメ。
彼の視線の先には倒れるハル達5人の姿。
怪我を負う彼等に悲しそうな眼差しを向けるのだった。