災厄の魔女
嘘だろ…
百もの数を独りで相手するだと?
信じられない…
有り得ないだろ…
無理にも程がある…
普通はギルドでチームを組み、数人で協力して相手する数だ…
なのにそれをたった独りで実行するだと?
命知らずも甚だしい…
自殺行為に等しいぞ…
「煩いなぁ。少し静かにしないかハル。手元が狂うだろうが」
狙いを定めるシンリはそわそわするハルを注意する。
いてもたってもいられないハルは何か言おうと口をパクパクさせるが、彼女の放った銃弾の行方を目に今度はまばたきを繰り返した。
シンリの放った銃弾は狙いを定めた狼に命中。
次いで放たれた銃弾も、そのまた次に放たれた銃弾も見事にクリーンヒット。
確実に狼の急所に命中させ、的確にその数を減らしていた。
「す、すげぇ……」
その一言が口をつく。
獲物目掛け猛スピードで走り出す狼達を何ら変わり無い表情で仕留めるシンリ。
彼女のその銃の腕に感嘆の声をあげずにはいられなかった。
「分断するとは、案外頭の良い獣のようだ」
覗いていたスコープから顔を上げ立ち上がるシンリは狙撃銃をライフルへと変換させる。
そして片足を縁に乗せ、散り散りになった狼達を狙い撃つ。
百居た数も今ではその四分の一以下。
確実に数を減らしていた。