災厄の魔女
「ニャハハ!ニャハハハハ!」
最下級ギルドの成せる技とは到底思えな事をやってのけた彼女だが、現在はこの有り様。
時刻は午前の9時だというのに既にベロンベロンの泥酔状態。
頬を染め高らかに笑う彼女の姿を目に思う。
昨晩のあの姿が台無しだと。
折角好印象で尊敬する価値があると思ったのに、全てがパーだ。
少しばかり見直した自分が馬鹿馬鹿しいとさえも思えてくる。
「ハァァ……」
あの光景を前に、目が冴えて一睡もする事ができなかったハル。
お陰で目の下には立派なくまができている。
「寝不足みたいだね、ハル」
「あぁ…昨晩はとんでもないものを目にしてしまったからな……」
爽やかに微笑むタクミはハルの前に腰掛ける。
グタリと突っ伏すハルは溜め息を吐きながらふと思う。
彼もシンリと同じなのではないかと。
こう見えて凄い魔力を持っているのではないかと
「シンリの依頼に付き添ったんだったね。それで落ち込んでる訳だ」
「お、落ち込んでなんかねぇよ!」
「ハハッ。まぁ、心配する事はないよ。彼女達は尋常ではないから」
僕も始めは驚いたと、ビスコッティを珈琲に浸しながら言うタクミ。
その言葉に頬杖をつくハルは目を細める。
もしや彼は彼女では無く、寧ろ俺に近しい存在なのではないか。
彼の言葉からそう察したハルは無意識の内ににやけてしまうのだった。