災厄の魔女
長身で鋭い目つきをしたスキンヘッドの男と、ポケットに両手を突っ込みガムを噛む少女。
スキンヘッドの男の言葉に眉を潜めるハルは後ろを振り向くが誰も居らず、男の言葉は自分達に向けられたものだと理解する。
「知り合い?」
「否、見覚えありませんね」
「そっか」
互いに知人では無いこの2人。
人違いでもしたのだろう。
繁華街ではよくある事だ。
そう独り納得したハルは何もふれずに立ち去る事に。
「って待て!何素通りしようとしてんだよ!?」
「へ?だって俺あんたの事知らないし」
無闇に声をかけ恥をかかせてはいけないと気を使ったつもりなのに、襟足を掴まれ足止めされたハル。
締まった喉をさすりながら男を見上げる。
「フンっ、これから殺られる相手の名を知らないとは、残念な奴等だな、お前等」
鼻で笑う男は胸を張る。
何を言っているのかわからないが、何だか腹の立つ奴だ。
「確か、クソハゲとヤンキーがよく絡んでくると言ってましたね」
「ハ、ハゲ……」
「誰がヤンキーだっつーの。あのババア次会ったらぶっとばす」
思い出したように言うタクミの言葉に男はうろたえ頭をさすり、機嫌を損ねた様子の少女は汚い言葉を吐き捨てた。