災厄の魔女
「逃げるが勝ち!」
「ちょっ、待ちやがれ!」
男が戦闘態勢に入った頃、踵を返し全速力で駆け出したハル。
町へ出れば攻撃もできないだろう。
そう考え出口を目指す。
そんな彼の後を追うのは相手を任せられた少女。
彼の行動に驚きながらも走り出す。
しかし追いつく筈もな……
「えーー!?」
自信を胸に振り返るが、彼女の姿は直ぐ其処に。
思った以上に走るのが速かった彼女。
このままでは町に出る前に捕まってしまう。
内心焦りながら必死で駆ける。
「ヒャッ!」
と、耳にはいってきたのは小さな悲鳴。
そっと振り返ると、先程まで駆けていた少女は泥濘に足を取られ派手に転倒していた。
これはチャンスだと、知らぬ間ににやけてしまうハル。
すると顔を上げた少女と目が合った。
「こんの……クソガキがぁ!!」
額を打ったのかそこは泥で汚れ、顔をひきつらせる彼女は怒りを露わに声を荒げる。
って俺、何もやってませんけど!?