災厄の魔女

怪しい雲行きの空から舞い降りたのは、白い翼の生えた天使でも、人々を光へ誘う女神でも無い。


悪戯に微笑むこの人物は、この世に災厄をもたらし続ける魔女である。




 「貴様がこの町を襲った張本人か?」


 「だとしたらどうする?」


 「事実ならば捕らえるまで。『一筋の光は鋼となりて 強固な鋼は鎖となる 天から伸びし光の鎖 罪有りし者を捕らえ裁きを与えよ!』」


中年の男の言葉に挑発した態度をとってみせる柴架。

その様子に男はすぐさま魔法を唱え彼女の捕縛を試みる。


が、しかし…




 「なっ!?」


天から伸びる強固な鎖は彼女の身体に巻き付くも、捕らえようと縛り上げた瞬間感じた違和感。


幾重にも巻かれた鎖の輪は彼女の身体をすり抜け何も捕らえる事無く地に落ちた。




 「…幻覚……魔法で作り上げた映像という訳か……」


爪先で瓦礫を蹴り上げ、それを掴むと柴架へと投げつけたミヤビ。


避ける素振りを見せない彼女の身体を透り抜ける瓦礫にブレる姿。

それを目に確信したミヤビは独り呟く。




 「残念ながら、今の私は実物では無い。捕らえる事も傷付ける事も、殺す事すらも不可能と言う訳だ」


モカブラウンの髪を指に絡め、妖艶に微笑む彼女を目に、相対する4人は気を引き締め魔力を集中させる。


彼女が今現在此処に存在していないとしても、何が起こるかわからない。


現実味の無い想像出来ない出来事が、彼女の周りではさも当たり前のように繰り広げられるのだから。











< 62 / 65 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop