災厄の魔女

 「この私が相手をしてあげたい所だが、今回は彼等に任せる事にした」


 「彼等……?」


 「そう、彼等」


何か企むような彼女の物言いに眉を潜めるミヤビ達。


4人は何かに気づき同時に地を蹴り四方へ跳んだ。




 「…雷撃……」


 「次来るよ!」


走る稲妻に轟く雷鳴。

それを交わした4人を次いで襲うのは紅き炎。


体勢を崩しながらも難なく回避するミヤビ達は一旦集まり敵を確認。




 「…何だ…これは……」


敵の姿に目を見開き、信じられないと言葉を失う。


彼等が目にしたのは、4人を囲むようにして並ぶ人の壁。

四方八方に広がる人の群れ。


数十、数百…否、数千は居るであろうその人々全てが敵意向きだしで、その矛先は柴架にでは無くミヤビ達4人に向けられる。




 「彼等はこの町の住民だ」


 「…住民……?この町の民に生存者は居ない筈……」


 「確かに、生き残りなど居やしないさ。全て私がこの手で殺したのだからな」


 「っ……」


崩れかけた建物の上に腰掛け高みの見物を決める柴架。


彼女の言葉に怒りを覚えるミヤビ達は絶え間なく繰り出される住民達の魔法攻撃を防ぎながら鋭い眼差しを向けていた。




 「既に理解しているとは思うが、彼等は死人。そんな彼等が何故其処に立ち魔法攻撃を仕掛けてくるのか」


何が可笑しいのかクスリと笑ってみせる彼女。


フッと吹いた風は周りの木々をザワリと揺らす。




 「それは私が、彼等の時間を巻き戻してやったからだよ」


降り出した雨の中、嫌味に見下ろす災厄の魔女はそれはそれは楽しそうに、とても可笑しそうに嬉しそうに笑っていた。











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