災厄の魔女
「このまま攻撃を防ぎ続けるだけじゃ埒が明かない。此方からも反撃し数を減らすべきだ」
「しかし彼等は善人。傷つける訳には……」
「善人も何も、彼等は既に死んでるんだぞ。そんな奴等をどうしようが俺達に罪はない」
少年の作り出した結界の中、意見の食い違う2人は睨み合う。
互いに引く気は無いようだ。
「ハハッ…ハハハハッ……あぁ失礼、あまりにもその姿が滑稽に見えて。気にせず続けてくれ」
馬鹿にしたような笑い声に頭上へと目を向ける。
瞳に映るのは腹を抱え大笑いする柴架の姿。
彼女には手を出せない悔しさから奥歯を噛み締め拳を握る。
「1つ良い事を教えてやろう。生き残る為のヒントと言う訳だ」
脚を組むとその上に肘を乗せ頬杖をつく。
片目を閉じ言う彼女のその姿はミヤビ達の怒りを更に煽る。
「彼等が狙っているのは君達4人の内只1人。君達の中の誰かが、彼等には私に、殺すべき者災厄の魔女に見えていると言う訳。その1人さえ特定すれば、君達は生き残る事が可能となる。しかし……」
一際強い風が吹き、モカブラウンの長い髪を乱暴に揺らす。
小降りだった雨は強さを増し、小さな雨粒は風に流される。
「しかし、生き残れるのはその1人を除いた3人のみだがな」
口の端を吊り上げ嫌味に笑う彼女。
何が可笑しいのか楽しいのか、高らかに笑うその声は暗いこの町に響き渡る。