災厄の魔女
戦闘が開始された場内では様々な声が飛び交っていた。
歓声、悲鳴、怒声、罵声、声援、雄叫び。
しかし其処とは打って変わり、ギルド長の集まる観客席は静寂に包まれる。
生徒達の繰り出す魔法に目を見張り、眉を潜め静かに唸ると無言で頷く。
緊迫した雰囲気を醸し出す彼等の後ろ姿を見つめる学園の講師である男性。
最近講師に就いたばかりの新米の彼は、ギルド長達に感心の眼差しを向けていた。
「ん……?」
しかし、真剣な眼差しを向けるギルド長の中に紛れ、どこか様子のおかしい人物が1人居る事に気付く。
他のギルド長は頷いたりメモをとったり、少しばかり身動きするのに固まったように微動だにしないその人物。
何かあったのではないかと心配に思い彼はその人物に歩み寄り、控え目に声をかけるが返事はない。
「あの…どうか……」
そっと顔を覗き込む。
恐る恐るといった感じで。
しかし、その人物の姿を瞳に映した瞬間彼は驚愕し目を見開いた。
と言うのも、背もたれにふんぞり返って座るその人物は腕を組み脚を組み、半開きの口からは穏やかな寝息が漏れ出ていたからだ。