闇夜に真紅の薔薇の咲く
始めこそ、不思議そうにそれを受け取ったノアールだったが描かれているものを見た瞬間、目を瞠る。





「これは……っ!」




呟いた、瞬間だった。





「――……!?」




朔夜は思わず身体を強張らせ、無意識に息を詰める。


がたんっと、ルイが座っていた椅子が音を立てて倒れた。


目の前では、ノアールがルイの胸倉をつかみあげ鬼気迫る顔でルイの身体を揺さぶる。




「どこでこれを見つけた。誰に渡された。言え! ルイ!!」

「うん。言うから。とりあえず手、離して。朔夜ちゃんが脅えてる」




ちらりと一瞥され、びくりと肩が跳ねた。


胸倉を掴まれているにも関わらず、ルイは表情一つ変えない。


感情が全て抜け落ちたような冷たい表情をした彼の言葉は氷のようで。


それが更なる恐怖になり、朔夜は思わず彼らから視線をそらした。


震えが止まらない。あれほどに感情的なノアールは初めてだ。


未だ共にいて日は浅いけれど、彼は常に感情を表に出さず寡黙だ。


そんな彼がこれほどに感情的になるなど思いもしなかったし、想像もつかなかった。


普段は大人しいせいなのか、それとも少しばかり乱暴な行動だったからなのか。


久しぶりに、彼らを怖いと思った。


震える朔夜を見て、ノアールははっとして手を離す。


ばつが悪そうに視線を彷徨わせると、朔夜の元に歩み寄る。


躊躇するように再び視線を彷徨わせると、彼はふぅとため息をついておもむろに震える朔夜を抱きしめた。




「――ッ!?」

「悪い。怖かった……よな?」











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