闇夜に真紅の薔薇の咲く
それを面白そうに横目で見ていたルイは、ふとノアールがもっているカードに視線が行くや否やにすっとその表情から笑みを消した。


彼の表情を見てノアールも考え込むような顔つきをして、つられたように朔夜も表情を引き締める。


皆の視線がノアールの手の中のカードに集まった。


漆黒に塗りつぶされた背景に、かなりの存在感を示す鮮やかな薔薇の花。


これは、一体何なのだろうか。


ルイが表情から笑みを消し、ノアールがあれほど激しく感情をあらわにするこのカードの正体は。


重苦しいまでの沈黙が室内に落ちた。


誰も何も口を開かない。ただ、カードを見つめるだけ。


そんな沈黙を破ったのは、珍しくノアールだった。


彼はカードから視線をそらさず、僅かに瞳を伏せる。



「……このカードの絵は、昔の王家の紋章だ」

「紋章?」



この飾り気のない絵が?


信じられず、思わず朔夜はまじまじとカードを見つめた。


普通、もうちょっと派手なものではないのだろうか。


鷹だとか剣だとか、いかにも王家だと存在感のある豪華なものだと今の今まで思っていた朔夜は呆気に取られてカードを凝視した。






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