闇夜に真紅の薔薇の咲く
頬を抑えて言葉にならない声で唸る朔夜に、ルイはさらに笑みを深くする。


口元は笑っているけれど、目が全く持って笑っていないその笑みにノアールは目ざとく気づき軽くルイの足を蹴った。


そのことで、今自分がどんな表情をしていたのか理解したのだろう。


彼はいつも通りの薄い笑みを口元に浮かべると、ついには頭を抱えてその場に座り込んで唸りだした朔夜の元へと歩きだした。


ノアールは剣呑に目を細め、そのあとに続く。


かなりの恥ずかしさがこみあげ、いっそのことどこかに穴を掘って隠れてしまおうかと考え込んでいた朔夜だったが肩を叩かれたことで我に返り、背後を見やった。


そこには、いつも通りの表情を浮かべた二人。




「ごめんごめん。そんなに恥ずかしがらないでよ。可愛いなぁ」

「……」



全く持ってどう言葉を返せばいいのか分からない。


よって、彼の言葉は全力で無視することにしよう。


しきりに頷いて、ふと朔夜は思い出す。そう言えば、まだ話しの続きではなかったか。


予想外な鞭の出現ですっかり忘れてしまっていた。


話しを戻そうと口を開きかけた朔夜だったが、その前にノアールが口を開いた。



「話しを戻すぞ。……これの説明は、そのあとだ」



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