闇夜に真紅の薔薇の咲く
そう言えば、あの時も二人は言っていた。


奴らはまだ気づいていない、と。


つまり、彼らには仲間がいると言うことだろう。


そして今、その仲間が自分を狙って本格的に動きだしている。


あのカードは、挑発のようなものなのだろう。


朔夜は深くため息をつく。まるで、ファンタジーだ。


彼女の大好きなファンタジーの本の登場人物に例えるなら、主人公の立ち位置か。


読んでいる分には楽しい本も、それっぽい状況に立たされれば全く持って楽しくない。


僅かに顔をしかめた朔夜はふと、疑問を抱いて瞬きをする。


カードが置いてあったのは、自分の机の上だ。


もしかすれば、カードを置いたのは学校の関係者かはたまた生徒ではないのだろうか。


霞高は名の知れた大企業の御曹司やお嬢様がいるせいか、警備はかなり厳重だ。


高校に入るためには、生徒手帳かそれぞれの家に配布されたパスを見せなければ学園内に足を踏み入れることは出来ない。


……だが、それも相手が姿を消すと言う厄介な能力を持っていなければの話しである。


相手は人間にあらず。異界に住む悪魔だ。それも、魔界と対立する者たち。


何らかの特殊能力を持っていないと言うことは、まずあり得ないだろう。


軽く握った右手を唇にあてて、朔夜は難しい顔をして考え込む。






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