闇夜に真紅の薔薇の咲く
的を射た答えに、朔夜は場違いにも関心を覚える。


いつも薄い笑みを浮かべて何も考えていないように見えるのに、こんなにも真っ当な答えが出るなんて。


かなり失礼なそれに、思わずきらきらと輝く瞳でルイを見ると彼は引きつった笑みで一歩後ずさった。


どうやら彼。普段の自分を忘れているらしい。


地味に広がるその衝撃に俯くと、ノアールがルイに避難の目を向ける。


その絶対零度の視線にルイは頬を引きつらせ、いつも通りの笑顔の仮面をつけると俯いた朔夜の元に歩み寄った。




「ごめんごめん。驚いちゃってさ……」

「や、大丈夫。うん、大丈夫だよ。謝らないで」



早くも落ち込みから立ち直った朔夜は満面の笑みをルイに返すと、彼は驚いたように目を瞠って思わずのように呟いた。




「立ち直り早っ」

「それが取り柄でもあるからね」



元々、それほどに落ち込んでもいなかったし。


にっと悪戯っぽい笑みを浮かべると、ルイとノアールは同時に何故か柔らかな笑みを浮かべる。


それに不思議に思いながらも、二人が笑ったことが嬉しくて朔夜は深い笑みを浮かべた。



その時――。



突然、保健室の扉が開く。三人同時に弾かれたようにそちらに視線をやると、そこには驚いたように目を見開く斗也がおり、彼は三人を一通り見渡すと眉をハの字に下げて苦笑を浮かべた。



「どうしたの? 三人そろって……。あ、花片さんと黒崎くん――あ、伊織くんの方ね。体調、大丈夫?」

「体調?」



なんのことだろうと、朔夜は首をかしげる。


大丈夫も何も、自分は風邪も引いていなければ体調不良を訴えた覚えもない。


心の底から不思議そうに彼を見ると、斗也もまた不思議そうに彼女とノアールと交互に見やる。





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