闇夜に真紅の薔薇の咲く
そして、少し焦ったように宙に視線を彷徨わせ頬をかいた。
「あれ? 僕の勘違いだったのかな?」
何が、と問いかけようと朔夜が口を開きかけた時、不意に背後から手が伸びてきて彼女の肩を強引に引き寄せる。
短い悲鳴を上げた朔夜は、そのまま背後の人物の腕の中にすっぽり収まり驚いて上を見上げると、そこには猫を被った時の王子的笑顔のノアールと目が合い、朔夜は思わず表情を引きつらせた。
そんな彼女に気づいていながらも、ノアールは特に反応を示さず斗也ににっこり笑いかける。
「うん。俺はもう良くなったんだけど、花片さんまだ微熱が続いててね。あと一時間だけ休ませるよ」
「あ、そうなんだ。……大丈夫? 花片さん」
「え? 大丈夫も何も微熱なんて……――。だ、大丈夫だよ! うん!」
優しく叩かれた頭がぐりぐりと力強くかきまわされ、上を見上げた朔夜はぎょっとした。
猫を被って王子のような笑みを浮かべたまま、全身から冷気を立ち上らせるノアールはさながら真冬の薔薇のように美しい。
……美しいがしかし、その美貌も相まって朔夜を脅すには十分な迫力があった。
視線が合うなり慌てたように意見を変えた彼女を不思議そうにしていた斗也だったが、焦りすぎてむせた朔夜を見て何を勘違いしたのか、心配そうに眉をハの字に下げる。
「つらそうだね。僕が変わってあげられれば良いんだけど……」
「やっ、そんなの悪いよ! ありがとう。気持ちだけ受け取っておくね」
困ったように微笑む朔夜に斗也は花が開いたような美しい笑みを浮かべた。
「ありがとう。君は優しいね。――それじゃあ、僕もう教室に帰るね。また授業が終わったらくるよ」
部屋を出る間際、その言葉だけを残して斗也は天使のような笑顔を浮かべて手を振る。
朔夜はそれを反射的に手を振りかえすと、斗也はくすりと笑みを零した。
「……幸せなお姫様だ」
彼が何を呟いたかは聞きとれなかったが……。
「あれ? 僕の勘違いだったのかな?」
何が、と問いかけようと朔夜が口を開きかけた時、不意に背後から手が伸びてきて彼女の肩を強引に引き寄せる。
短い悲鳴を上げた朔夜は、そのまま背後の人物の腕の中にすっぽり収まり驚いて上を見上げると、そこには猫を被った時の王子的笑顔のノアールと目が合い、朔夜は思わず表情を引きつらせた。
そんな彼女に気づいていながらも、ノアールは特に反応を示さず斗也ににっこり笑いかける。
「うん。俺はもう良くなったんだけど、花片さんまだ微熱が続いててね。あと一時間だけ休ませるよ」
「あ、そうなんだ。……大丈夫? 花片さん」
「え? 大丈夫も何も微熱なんて……――。だ、大丈夫だよ! うん!」
優しく叩かれた頭がぐりぐりと力強くかきまわされ、上を見上げた朔夜はぎょっとした。
猫を被って王子のような笑みを浮かべたまま、全身から冷気を立ち上らせるノアールはさながら真冬の薔薇のように美しい。
……美しいがしかし、その美貌も相まって朔夜を脅すには十分な迫力があった。
視線が合うなり慌てたように意見を変えた彼女を不思議そうにしていた斗也だったが、焦りすぎてむせた朔夜を見て何を勘違いしたのか、心配そうに眉をハの字に下げる。
「つらそうだね。僕が変わってあげられれば良いんだけど……」
「やっ、そんなの悪いよ! ありがとう。気持ちだけ受け取っておくね」
困ったように微笑む朔夜に斗也は花が開いたような美しい笑みを浮かべた。
「ありがとう。君は優しいね。――それじゃあ、僕もう教室に帰るね。また授業が終わったらくるよ」
部屋を出る間際、その言葉だけを残して斗也は天使のような笑顔を浮かべて手を振る。
朔夜はそれを反射的に手を振りかえすと、斗也はくすりと笑みを零した。
「……幸せなお姫様だ」
彼が何を呟いたかは聞きとれなかったが……。