闇夜に真紅の薔薇の咲く
特別棟の廊下を闇雲に走りまわり、目に入る部屋の扉を走りながら片っ端に引っ張るけれどどれも開く気配がない。


深刻な運動不足である彼女にとって、数分走ると言うだけでも息が上がる。


今の彼女はもう限界に近かった。


息を弾ませて時差途切れる意識を何とかつなぎ止めながら階段を下りていたその時、最悪にも意識が途切れ階段から足を滑らせる。




「――ッ！？」



近づく景色に息を詰め、覚悟を決めてぎゅっと目を閉じたその瞬間。


無意識に伸ばした手が誰かに捕まれ、そのまま引き上げられ誰かの腕の中に収まる。


酸欠でぼーっとしながら見上げると、そこには無表情なノアールの顔が間近にあり思わず息をのんだ。


ノアールは背後を睨んでいたが、不意にこちらに一瞥をくれ朔夜の身体を軽く押す。


咄嗟のことに驚き目を見開いた朔夜だったが、別の温かい感触に息をつめて見上げると、視線があったルイがいつも通りの薄い笑みを浮かべて「ヤッホー」と言って手を振った。


いつの間に現れたのか。気配も無く訪れた彼に驚いて硬直していると、不意にルイは前方を指差す。


指された先を見つめると、そこにはかなり間近に迫った悪魔がおり朔夜は無意識にルイのシャツを握った。


速度を緩めることなくこちらに突っ込んでくる悪魔を凝視していると、不意に一陣の風が吹いた。





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