闇夜に真紅の薔薇の咲く
合点がいき、朔夜は更に項垂れる。


それを見下ろしていたノアールは、苛立たしげに息をついた。



「どうして教室で待っていなかった?」



苛立ちは消えていない。


けれど先ほどよりはかなり優しげなそれに、朔夜はおずおずと顔をあげて上目遣いにノアール達を交互にみる。



「……テスト勉強、しなきゃと思ったから」

「テスト勉強?」



怪訝そうに眉をひそめて、ノアールは反復する。


それに朔夜は遠慮がちに頷いた。


彼女とて、始めは教室で待っているつもりだったのだ。


たった数分の休み時間。どこに行こうとも思わない。


そう、思っていたのだ。……――柚梨たちと会話をするまでは。


朔夜は数分前の会話を思い出し、視線を地面に落とす。


柚梨たちが登校し、自然と朔夜の周りを囲むようにして集まった友人たちの話題は自然と今月に行われる期末テストの話しとなった。


テストのことなど頭から吹っ飛んでいた彼女は、当然のことながら目を剥くと、ほぼ反射的に図書室に向かって突っ走った。


朔夜は、苦手教科の点数がことごとく悪い。


理数系な苦手な彼女は中学時代に何度も天才的な点数を叩きだし、仕舞いには担任にこのまま理数系を頑張らなければ高校に行けませんよ、と言われる始末。


流石にそこまで言われれば頑張らざるおえない。


高校に行けないと言われて頑張らない者はいないだろう。


テスト勉強はテストを行う月の一日から始め、ほとんどを苦手な教科に時間を費やす。


得意教科はテスト一週間前に始めた結果、何とか並の点数を取ることに成功した彼女は、以来、その勉強法をずっと続けていた。


そこまで話すと、ノアールな納得したように頷く。



「なるほどな。つまり、頭より先に身体が動いたと」

「ってかさー、テストってそんなに必死になるようなもんなの?」

「当たり前でしょ!!」



頭の後ろで指を組んだルイに噛みつかんばかりに朔夜は反応した。







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