闇夜に真紅の薔薇の咲く
少し奇妙な感じになり胸に手をあて、あたりを見回していると不意に声が響いた。
『――闇にも動じぬとは。何と強く美しい姫君か』
「……誰?」
空間が震えた。
声からして男性だろうか。
ねっとりとした肌にまとわりつくようなその声音に顔をしかめて、少女はあたりを見回した。
けれど見えるのは闇ばかりで、声の主はどこにも見つからない。
『我らが姫君。千年の眠りから今目覚めるとき。今こそ、憎き者どもに復讐を……』
姿が見つけられないうちに、先ほどとは別人の声が聞こえる。
今度は女性。独特の高い声音はどこか闇を秘めているようで、うすら寒さを感じた。
少女は困惑する。一体何のことなのか分からない。
“姫君”とは一体誰のことなのか。
そして、復讐とはどういう……。
眉をひそめると、不意に首筋にちくりとした痛みがはしった。
驚いて首筋を抑えると、今まで腕があった場所から白い生気のない腕が伸びてきて、少女は短い悲鳴を上げる。
口元を覆ってその場から飛び退ると今度は彼女のいた場所に白い腕が二本、闇を縫って伸びてくる。
それを見て、少女はえもしれぬ恐怖を感じた。
闇を縫って伸びてくる腕は確かに人間の者。
けれどそれは生きている者の色とは遥かに異なり、あまりにも白すぎる腕にぞっとして鳥肌がたつ。
思わず左手で自分の右腕を掴むと、空間が震えた。
『――闇にも動じぬとは。何と強く美しい姫君か』
「……誰?」
空間が震えた。
声からして男性だろうか。
ねっとりとした肌にまとわりつくようなその声音に顔をしかめて、少女はあたりを見回した。
けれど見えるのは闇ばかりで、声の主はどこにも見つからない。
『我らが姫君。千年の眠りから今目覚めるとき。今こそ、憎き者どもに復讐を……』
姿が見つけられないうちに、先ほどとは別人の声が聞こえる。
今度は女性。独特の高い声音はどこか闇を秘めているようで、うすら寒さを感じた。
少女は困惑する。一体何のことなのか分からない。
“姫君”とは一体誰のことなのか。
そして、復讐とはどういう……。
眉をひそめると、不意に首筋にちくりとした痛みがはしった。
驚いて首筋を抑えると、今まで腕があった場所から白い生気のない腕が伸びてきて、少女は短い悲鳴を上げる。
口元を覆ってその場から飛び退ると今度は彼女のいた場所に白い腕が二本、闇を縫って伸びてくる。
それを見て、少女はえもしれぬ恐怖を感じた。
闇を縫って伸びてくる腕は確かに人間の者。
けれどそれは生きている者の色とは遥かに異なり、あまりにも白すぎる腕にぞっとして鳥肌がたつ。
思わず左手で自分の右腕を掴むと、空間が震えた。