闇夜に真紅の薔薇の咲く
『何故!? 何故およけになられるのです!?』

『我らと共にあなたの故郷へ……。闇の国へ向かいましょう』

『さぁ。我らと共に……』








始めに男性の声が、次に女性の声が、最後には仲良く二人一緒に声をそろえて彼女を誘(イザナ)う。







闇から白い腕が四本、言葉が終わると同時に伸びてきて少女は必死にその腕から逃げた。







意味が分からない。どういうことだ。






自分の故郷は日本である。






“闇の国”などと言う国は記憶にも無ければ聞いたことも無い。







一体、彼らは何を言っているのだろう。






勘違いしているのだろうか。自分のことを彼らの言う“姫君”と……。






白い腕が逃げる彼女を追う。





少女はその腕から必死に逃れて、先の見えない闇へと突き進んだ。






これは夢だ。こんなことが現実に起こり得るはずがない。






息苦しさを感じながら、少女はぎゅっと瞳を閉じる。






最悪なまでの悪夢が、早く覚めるように願って――。














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