闇夜に真紅の薔薇の咲く
Xx.+.
星の光も、はたまた月の光も射すことのない忘れ去られた魔界の郊外。
手入れなど何もされていない鬱そうと茂る森の中、その廃城はあった。
薄汚れ、ひび割れた城壁。錆付いた門に、ガラスは割れ外れかけた窓。
見るからに不気味で人が住んでいなさそうなその城の中は、外見とは裏腹に落ち着いたアンティーク調である。
猫あしのワインレッドのソファーに腰掛け優雅に紅茶を飲んでいた青年は、ふと目を細めた。
「……エジェリーとグレンはやられたか」
「はい。死神二人にあっさりと」
先ほどまで誰もいなかった空間に一人の青年が現れる。
銀色の長髪の彼は、何事も無いように青年の隣に立ち笑顔を浮かべた。
青年はそれをちらりと見やり、「そうか」と興味なさげに呟いてティーカップに口づける。
他人からみれば己が目を疑いたくなるような現象だが、彼にとってはもう日常だ。
いちいち驚くだけ時間の無駄というものである。
その素っ気ない態度に銀髪の青年は特に気にした風も無く笑顔を浮かべると、「どうなさるのですか?」と首をかしげた。
「また人間界に誰かを送り込むのであれば、適当な者を連れてまいりますが……」
「いや、いい。送り込む奴はもう決めた」
入って来い、と言う声と共に扉が開き一人の少年が姿を現す。
銀髪の青年は、少年と目が合うなり瞠目した。
「あなた様は――……」
驚愕で声も出ない彼に向かって、少年は微笑を浮かべて会釈して見せた。
星の光も、はたまた月の光も射すことのない忘れ去られた魔界の郊外。
手入れなど何もされていない鬱そうと茂る森の中、その廃城はあった。
薄汚れ、ひび割れた城壁。錆付いた門に、ガラスは割れ外れかけた窓。
見るからに不気味で人が住んでいなさそうなその城の中は、外見とは裏腹に落ち着いたアンティーク調である。
猫あしのワインレッドのソファーに腰掛け優雅に紅茶を飲んでいた青年は、ふと目を細めた。
「……エジェリーとグレンはやられたか」
「はい。死神二人にあっさりと」
先ほどまで誰もいなかった空間に一人の青年が現れる。
銀色の長髪の彼は、何事も無いように青年の隣に立ち笑顔を浮かべた。
青年はそれをちらりと見やり、「そうか」と興味なさげに呟いてティーカップに口づける。
他人からみれば己が目を疑いたくなるような現象だが、彼にとってはもう日常だ。
いちいち驚くだけ時間の無駄というものである。
その素っ気ない態度に銀髪の青年は特に気にした風も無く笑顔を浮かべると、「どうなさるのですか?」と首をかしげた。
「また人間界に誰かを送り込むのであれば、適当な者を連れてまいりますが……」
「いや、いい。送り込む奴はもう決めた」
入って来い、と言う声と共に扉が開き一人の少年が姿を現す。
銀髪の青年は、少年と目が合うなり瞠目した。
「あなた様は――……」
驚愕で声も出ない彼に向かって、少年は微笑を浮かべて会釈して見せた。