闇夜に真紅の薔薇の咲く
その勢いに少したじろぎつつ、曖昧な笑みを浮かべると夜空が胡乱気に声を手招きした。







「そんなところで何してるの。早くおいで」






おいでと言われたって、早々に行けるわけがない。






彼女にとっては異世界に飛び込むようなものなのだ。






一応、こくりと頷いて一歩足を踏み出す。






足が動いたことを確認して二歩三歩と足を踏み出し、後もう少しと言うところでそろりと顔をあげて……すぐに後悔した。






視界に飛び込んできたきらびやかな光景を前にしてしまえば、踏み出せるあと数歩も踏み出せるわけがない。






生れて初めてこんな数の美系を前にすれば、例え家族だったとしても気後れしてしまう。






(……何で私だけ美人に生れなかったんだろ)





神様って不公平だ、と内心で嘆きつつ唇をかみしめ自分の席へと歩みを進めて椅子に腰かけた。






ほんの僅かの距離しか歩いていないのに、まるで長距離歩いて来たかのようにどっと疲れが押し寄せてくる。






それをため息とともに外へと追い出し、手をあわせて顔をあげ、







「いただ、き……ま……す……」







絶句した。







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