闇夜に真紅の薔薇の咲く
けれども仕方がないではないか。






ここにいれば、どうしても。






美系な彼らを視界に入れるたびに、場違いだと感じ居心地がとても悪くなるのだから。






(おかしな話だよね)





美系と言ったって、両隣りにいる彼ら以外は身内だ。






それなのに、たった二人増えただけなのにこうも居心地が悪くなるなど……。






箸を握る手が震える。






背中にひしひしと視線を感じるけれど、早く前を向かなければと思うのだけれど、なかなか前を向くことが出来ない。






前を向いて、美系な夜空を見るのがどうしてか嫌だった。






見てしまえば、余計に自分がみすぼらしく感じてしまいそうで……。






(……病んでんのかな)






思わず小首をかしげた朔夜に、母の静かな声音がぶつかった。









「朔夜……。いい加減にしなさい。そんなにお行儀が悪いと……――伊織くんたちに嫌われるわよっ!!」

「…………」








朔夜は思わず前を向く。






視界に入った母の表情は何とも真剣で、冗談でいったことではないと言うことは十分に分かった。






怒るところがどうしても違うような気がしてならない朔夜は釈然としない表情で夜空を見ると、彼は静かに首を振る。






気にしてはいけないと言うことだろう。






彼女が静かに頷くと、彼も彼女を見つめたまま頷く。





母の言葉は気にしないようにして、ご飯に手をのばすと右隣から視線を感じて見上げると、何故か心配の色を僅かににじませたノアールの瞳と目があった。





彼は朔夜が顔をあげることが予想外だったのか、目が合うや否やに驚いたように目を見開きすぐにふいっと逸らす。








「あの、ノ……い、伊織さん……?」








――気づけば、声をかけていた。






思わずノアールさん、と呼びかけそうになり心臓が止まるかと言うほど焦りながら彼を見ると、彼はゆっくりとこちらを振り向く。
















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