闇夜に真紅の薔薇の咲く
入浴を済ませた後、朔夜はルイに呼ばれて彼女の隣にある空き部屋だった場所へと足を向けた。





昨日までは物置と化していた空き部屋はいつの間にか綺麗に片づけられ、机やベッドなどの家具が置かれている。





白と黒を基調にしたモノトーンの部屋に足を踏み入れると、ベッドにはノアールが腰掛け読書をしており、椅子にはルイが背もたれに両腕をのせてその上に顎を置いた体勢で座っていた。





ルイは暇なのか、足をぶらぶらさせており朔夜を見るなり花が開いたように笑う。







「あ、朔夜ちゃん。何もない部屋だけど、どうぞ」

「……」







これはあくまで彼女の予想だが、ここはノアールの部屋ではないのだろうか。






ルイを見つめて小首をかしげると、彼は途端に悪戯っぽい笑みを浮かべた。








「って言っても、ここオレの部屋じゃないんだけどね」

「はぁ……」








気の抜けた返事をして「お邪魔します」と言って足を踏み入れる。






とりあえず彼らと距離を置いて扉の近くで立ち止まっていると、今までこちらの見向きもしなかったノアールが本から視線をあげるとちらりともの言いたげな視線をこちらに向ける。






どうしたのだろう、と瞬きをすると彼はくいっと顎をしゃくった。









「……そんなとこに突っ立ってないで、座れば」

「えっ。い、いいんですか?」

「良くなかったら言ってないから」

「そ、そうですよねー……」






彼が視線で示した先は何故かノアールの隣だった。






戸惑う朔夜に、彼は言葉少なに正論を言ってのけると興味が失せたと言わんばかりに再び本へと視線を落としこちらにはちらりとも視線を寄こさない。






朔夜は僅かに逡巡した後、意を決したようにごくりと生唾を飲み込むとゆっくりと歩みを進めてベッドの端ぎりぎりに腰掛ける。






何故かどきどきと高鳴る鼓動を抑えようと深呼吸をすると、くすりと笑みがこぼれる気配がしてルイの方に視線を向けた。






見れば、彼はくすくすと笑っていて……。







「……え? 私変なことでもしてました……?」

「いや、緊張してる朔夜ちゃん可愛いなぁって。そんなに緊張しないで。別にオレたちは君を取って食おうと思って呼んだわけじゃないから。ね? ノアール?」

「お前はともかく、俺はな」















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