闇夜に真紅の薔薇の咲く
本に視線を落としたまま、彼はさらりと言い放つ。






その言葉を聞いてルイは拗ねたように唇を尖らせた。






二人を交互に見ていた朔夜は、二人はまるで違うなと漠然と思った。





親しみやすいルイに対し、猫を被ったどこか近寄りがたい雰囲気を醸し出すノアール。





性格も対照的で、どうしてこの二人が一緒に行動しているのか少し不思議だった。





せわしなく二人を交互に見る彼女の視線が、不意にルイとあう。





彼はまたもやくすりと笑みをこぼすと、「じゃあ、始めようかな」と呟く。





一体何を始めるのだろう。





首をかしげると、隣に座っていたノアールが本を閉じ、ルイは淡い微笑を浮かべたまま朔夜をじっと見つめた。








「君をここに呼んだのはね、オレたちが……君が、何者であるかを教えるため。
そうだな……。それじゃあ、まずオレたちが何なのかを言おうかな」







一瞬悩む素振りを見せ、ルイは指を鳴らして見せる。





ノアールもベッドから立ち上がり指を鳴らすと、今まで何もなかった空間に先日目にしたばかりの武器が現れ驚愕した。






ノアールの元には大鎌が。ルイの元には拳銃が。





突然現れた武器を手にした二人の纏う雰囲気が、一瞬にして変わった。





恐らく幻覚だろう。ルイの背後に白い羽、ノアールの背後に黒い羽が散る。





その様があまりにも美しく幻想的で、気づけば目を奪われていた。








「まぁ、これを見て分かるようにオレたち人間じゃ――……って、朔夜ちゃん? おーい?」







呆けたようにぼーっとしていた朔夜は、目の前で何かが動く感覚にはっと我に返る。





いつの間にか目の前にはルイがおり、驚いて後ずさると彼はふっと表情を緩めた。







「どうしたの? ボーっとして」

「……い、いえ。何でもありませんっ!」

「そう?」







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