闇夜に真紅の薔薇の咲く
「それにしても不思議だね。今日学校でこれ言ったらかなりの女の子が悲鳴上げたんだけど……」

「それはあの子たちがイケメン好きだからかと」







ため息とともに言うと、ルイは不思議そうに瞬きを繰り返す。




それを見つめていると、あれっと朔夜は首をかしげた。




(そう言えば、何の話ししてたんだっけ? 確かこう言う話しじゃなかったよね……?)




考え、数分とたたずに自分がここに呼ばれた理由を思いだし我知らず苦笑がこぼれる。





いつの間にやら全く違う話しになっていた。




話しがずれかけたのは、恐らくノアールが髪を引っ張ったあたりからだろうか。




薄らと唇に笑みをのせて微笑むと、ルイが不思議そうに首をかしげる。






「朔夜ちゃん? どうしたの? 急に笑ったりして」

「何でもないです! そう言えば……、あなた方はどうして私を殺しにここへ?」





話しを戻すためそう問いかけると、途端にその場の空気が張り詰めた。




変わらず笑みを浮かべたルイの表情はどこか固く、そっぽを向いていたノアールの表情は会ってから一番感情が読みとれない。




触れてはいけないことを聞いてしまったのだろうか、と戸惑っていると「まぁ、いずれは話さなきゃいけないことだし」とルイがぽつりと呟いた。





膝をたててベッドに座っていたノアールにルイは目配せする。




ノアールは無言で頷くと、彼は手を一振りして手に持っていた銃を消した。








「オレたちが君を殺そうとした理由はただ一つ。魔王陛下のご命令だから」

「まおうへいか?」

「そう。オレたちが絶対の忠誠を誓う、もっとも尊い存在」





浮かべていた笑みを消し、彼は神妙な顔つきで彼女の瞳をじっと見つめる。





多少の居心地の悪さを感じながらも、朔夜はじっとルイの瞳を見つめ返した。





魔王陛下とは、恐らく彼女が今まで短縮して魔王と呼んでいた存在だろう。








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