闇夜に真紅の薔薇の咲く
朔夜が好き好んで読むファンタジーの作品でよく目にしたその名前。
架空の人物だろうとばかり思っていたのだが、まさか実在していたとは……。
魔王。
それはどんなに恐ろしい悪魔でさえひれ伏してしまう絶対の闇の支配者。
朔夜のイメージではこんな感じである。
正当か間違っているかは定かではないが。
そんな恐ろしい存在に目をつけられてしまった自分。
自覚した瞬間、あまりの恐ろしさで身体が震えた。
自分の身体を抱きしめて、朔夜はうつむく。
少しでも、この震えが治まるようにと思って。
けれど、当然のことながらそんなことをしたぐらいで震えなど治まるはずもない。
次第にじわりと目頭が熱くなり、視界がにじみ出す。
どうして、と朔夜はかすれた声で呟いた。
どうして自分なのだろう。
どうして自分は殺されなければならないのだろう。
何かしてしまったのだろうか。魔王の気にくわないようなことを……。
溢れそうになる涙を唇を噛んで必死にこらえ、朔夜は震える瞼を閉じる。
と、不意に温かい何かが彼女の目尻に浮かぶ涙を拭った。
驚いて目を開けるとそこには無表情のノアールの顔が間近にあり、目を見開くと彼はまたもやこちらをじっと見つめる。
「俺たちはお前を殺さない、と言っただろ。何を泣く必要がある?」
「……」
「――俺がお前を守る。だから何も怖がる必要はない」
淡々とした声音ににじむ優しさが、恐怖をとかしていく。
架空の人物だろうとばかり思っていたのだが、まさか実在していたとは……。
魔王。
それはどんなに恐ろしい悪魔でさえひれ伏してしまう絶対の闇の支配者。
朔夜のイメージではこんな感じである。
正当か間違っているかは定かではないが。
そんな恐ろしい存在に目をつけられてしまった自分。
自覚した瞬間、あまりの恐ろしさで身体が震えた。
自分の身体を抱きしめて、朔夜はうつむく。
少しでも、この震えが治まるようにと思って。
けれど、当然のことながらそんなことをしたぐらいで震えなど治まるはずもない。
次第にじわりと目頭が熱くなり、視界がにじみ出す。
どうして、と朔夜はかすれた声で呟いた。
どうして自分なのだろう。
どうして自分は殺されなければならないのだろう。
何かしてしまったのだろうか。魔王の気にくわないようなことを……。
溢れそうになる涙を唇を噛んで必死にこらえ、朔夜は震える瞼を閉じる。
と、不意に温かい何かが彼女の目尻に浮かぶ涙を拭った。
驚いて目を開けるとそこには無表情のノアールの顔が間近にあり、目を見開くと彼はまたもやこちらをじっと見つめる。
「俺たちはお前を殺さない、と言っただろ。何を泣く必要がある?」
「……」
「――俺がお前を守る。だから何も怖がる必要はない」
淡々とした声音ににじむ優しさが、恐怖をとかしていく。