闇夜に真紅の薔薇の咲く
「すごいね。その通りだよ。オレたちは、魔王陛下に“闇の姫”の生まれ変わりを殺すよう命じられた。――再び、魔界に不幸が降りかかる前に」






神妙な顔つきでルイは静かに目を伏せる。





不幸、と口の中で呟いて朔夜は目を細めた。





どうやら、自分の前世はあまり良い行いをしてはいないようだ。





彼女の隣に座っていたノアールがすっと静かに立ち上がる。





半分伏せられた瞼から覗く淡い青の瞳は、寂しげに揺れたがそれは瞬時にかき消えいつもの淡々とした表情に戻った。





それを思わず見てしまった朔夜の胸はどうしてかずきりと痛んだ。





その微かな痛みに唇を噛むと、ノアールの感情の読めない声が耳に入ってくる。








「――“闇の姫〟は魔界きっての魔力の持ち主で、最悪の女王。彼女は革命で殺される際、こんな言葉を残した」


『――私はまた千年の時を経てこの世に生を受けるだろう。その時は……貴様ら憎き者どもに復讐を。お前たちを絶望にどん底に叩き落としてやろう。
私が目覚めるその時まで、せいぜい一時の幸せを味わっていればいいさ』







声が、重なった。





視界がぐにゃりと歪み、目の前に大勢の人間が憎しみにもにた視線をこちらに向けている。




















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