闇夜に真紅の薔薇の咲く
翌日、朔夜はいつも以上に女子の鋭い視線を浴びながら学校への道を歩いていた。
容赦なく突き刺さる女子の視線と、通行人の好奇の視線に居心地悪そうにちらりと頭上を上目遣いに見上げると、あたりに薔薇が咲いていてもおかしくない王子的笑顔を浮かべるノアールと目が合い慌てて逸らす。
家を出てから数十分。朔夜はずっと人々の視線にさらされていた。
と言うのも、彼女の両隣りにはこの世の者とは思えない美貌を持った死神二人がいるからである。
先ほどまでは夜空もいたのだが、クラスメイト数人と共に先に学校に行ってしまった。
彼が先に行ったことで、朔夜に向けられる好奇の視線も僅かに減ったがそれでも多い。
通りすがるほとんどの人々は必ず振り替えり何ごとかを耳打ちし、彼女を視界に入れるや否やに瞬時に嫌味を言う女子特有の表情にかわり、聞こえるか聞こえない程度に嫌味を置いていく。
その嫌味を一つ残らず拾ってしまう無駄に良い己の耳に、思わず乾いた笑みを零し、次の瞬間には疲れ切ったようなため息を落とした。
分かっているとも。自分が彼らと共にいることが不釣り合いなことなど。
重々承知している。が、何分彼らが離れてくれないのだ。
道すがら、数え切れないほど彼らと離れるための理由を考えた。
思い浮かぶたびに実行してみたものの、ある時はルイの親しみやすい笑顔に流され、ある時は猫を被ったノアールが無駄に優しげな声音で彼女の言を一蹴する。
無い頭で知恵を振り絞ったため、無駄に疲労が蓄積して今ではもう何も案が浮かんでこない。
彼らが何故自分から離れてくれないのか分からないが、こうなれば柚梨が来るのを待つのみだ。
彼女がいれば、ある程度の視線は逃れられるだろう。多分。
嘆息し、おぼつかない足取りで歩みを進めていると唐突に、背後から強い衝撃に襲われ転びそうになった所で、いつの間にか下腹部にまわされた腕が彼女を後ろに引っ張る。
「――ぐえっ」
「朔夜ー! おはよう!」
華の女子高生らしからぬうめき声に重なるようにして、待ちわびていた親友の可愛らしい声が聞こえ、朔夜の背後からひょっこりと顔を出す。
腹部がじんじんと鈍く痛む。その痛みをやり過ごし、背後から目の前へと小走りでやってきた柚梨に苦しげな笑みを浮かべた。
「ゆ、柚梨。おは……――ッ!」
最後まで言わぬうちに、身体をくの字に折り曲げ朔夜は激しくせき込む。
容赦なく突き刺さる女子の視線と、通行人の好奇の視線に居心地悪そうにちらりと頭上を上目遣いに見上げると、あたりに薔薇が咲いていてもおかしくない王子的笑顔を浮かべるノアールと目が合い慌てて逸らす。
家を出てから数十分。朔夜はずっと人々の視線にさらされていた。
と言うのも、彼女の両隣りにはこの世の者とは思えない美貌を持った死神二人がいるからである。
先ほどまでは夜空もいたのだが、クラスメイト数人と共に先に学校に行ってしまった。
彼が先に行ったことで、朔夜に向けられる好奇の視線も僅かに減ったがそれでも多い。
通りすがるほとんどの人々は必ず振り替えり何ごとかを耳打ちし、彼女を視界に入れるや否やに瞬時に嫌味を言う女子特有の表情にかわり、聞こえるか聞こえない程度に嫌味を置いていく。
その嫌味を一つ残らず拾ってしまう無駄に良い己の耳に、思わず乾いた笑みを零し、次の瞬間には疲れ切ったようなため息を落とした。
分かっているとも。自分が彼らと共にいることが不釣り合いなことなど。
重々承知している。が、何分彼らが離れてくれないのだ。
道すがら、数え切れないほど彼らと離れるための理由を考えた。
思い浮かぶたびに実行してみたものの、ある時はルイの親しみやすい笑顔に流され、ある時は猫を被ったノアールが無駄に優しげな声音で彼女の言を一蹴する。
無い頭で知恵を振り絞ったため、無駄に疲労が蓄積して今ではもう何も案が浮かんでこない。
彼らが何故自分から離れてくれないのか分からないが、こうなれば柚梨が来るのを待つのみだ。
彼女がいれば、ある程度の視線は逃れられるだろう。多分。
嘆息し、おぼつかない足取りで歩みを進めていると唐突に、背後から強い衝撃に襲われ転びそうになった所で、いつの間にか下腹部にまわされた腕が彼女を後ろに引っ張る。
「――ぐえっ」
「朔夜ー! おはよう!」
華の女子高生らしからぬうめき声に重なるようにして、待ちわびていた親友の可愛らしい声が聞こえ、朔夜の背後からひょっこりと顔を出す。
腹部がじんじんと鈍く痛む。その痛みをやり過ごし、背後から目の前へと小走りでやってきた柚梨に苦しげな笑みを浮かべた。
「ゆ、柚梨。おは……――ッ!」
最後まで言わぬうちに、身体をくの字に折り曲げ朔夜は激しくせき込む。