闇夜に真紅の薔薇の咲く
どうやら、先ほどの衝撃は予想以上のものだったらしい。




オロオロと心配そうに朔夜の周りを右往左往する柚梨に手をあげてもう大丈夫、と笑みを向けると彼女は安堵したように肩の力を抜く。




可愛らしいその行動に笑みをこぼすと、不意に彼女らを挟むようにしてノアールとルイが並行すると柚梨に向かってにこやかに手を振った。






「おはよー。柚梨ちゃん」

「おはよう。桐島さん」

「おはよー。えぇっと……黒崎くん……たち？」





果たしてどう呼べばいいものか、と柚梨は「あれ？」と言って小首をかしげる。




柚梨の疑問は、朔夜も少し抱いていたものだった。




ルイとノアールはこっちでは双子の設定だ。




名字は当然同じのため、名字で呼ぶとなると少しややこしい。




けれど、だからと言って名前で呼ぶのは馴れ馴れしいと言うか何と言うか……。




恐らく柚梨も同じ考えなのだろう。




ああでもないこうでもない、と頭を抱えてくるくると回って考え込んでいる。




そんな彼女を見て、ルイはぷっと吹き出すと「瑠衣でいいよ」と笑いをこらえながら言うと、ノアールも苦笑を零しながら「俺も伊織でいいよ」と言葉を発した。





それをきいて、柚梨はこちらに背を向けた状態でぴたりと動きを止めると、ものすごい速さでぐるりとこちらを振り向く。





その表情はこれ以上ないほどに輝いていた。






「じゃあ、伊織くんと瑠衣くん！ おはよう！」

「うん。おはよう」






にこやかに返して、ルイは柚梨に手を振る。







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