闇夜に真紅の薔薇の咲く
ふんわりとした茶色のボブヘアーは顎のところで切りそろえられ緩くウェーブがかかっており、肌は白雪のように白く、ほんのりと色づく頬は桜色。茶色がかった色素の薄い瞳は大きく、睫毛はつけまつげレベルに長い。





少し大きめの制服を着た彼女の身長は朔夜よりも小さく、そこがとても愛らしい。






柚梨は朔夜の隣に並ぶと、にこっと笑って小首をかしげた。







「おはよう! 朔夜」

「おはよ。柚梨」






茶色の髪がさらりと揺れる。





あまりにも可愛らしい笑顔にときめきかけ、朔夜は軽く頭を振った。





いけないいけない。同性にときめいてどうする。





自分にはそっち系の趣味はない。断じてない。





心の中で言い訳をし、きょとんと不思議そうに首をかしげる柚梨と目が合う。





柚梨は再び天使のような微笑みを浮かべると、朔夜の腕を引っ張った。







「ねぇねぇ。早く学校行こ?」

「うん。行こうか」

「行こう行こう! あ、花片先輩! おはようございます」

「あぁ。柚梨ちゃん。おはよう」







思い出したように柚梨が挨拶すると、夜空は眩しいほどの笑顔を浮かべて手をあげる。





相変わらず誰にも愛想のいい兄だ。





柚梨とは小学校の頃からの付き合いで、兄である夜空は彼女のことをとてもよく知っていた。





昔は名前同士で呼び合っていたが、中学になり先輩後輩の上下関係がつき気づけば柚梨は彼のことを名字で先輩付けで読んでいる。





おかげで夜空と同じ名字の彼女は分かってはいても、自分が先輩付けされているような変な感じになる。







柚梨は夜空に満面の笑みで会釈するとそのまま朔夜の腕を引っ張って学校まで上機嫌で突っ走った。






夜空とは違い運動が苦手な彼女が学校につく頃には死にそうになっていたことなど、言うまでも無い――。





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