闇夜に真紅の薔薇の咲く
「――うっ」




大丈夫、と言葉を発しようとしたけれど酸素が一気に肺に入ってきたせいでせき込み、答えることができない。



返事の変わりの手をあげると、どうやら彼女は正し意味をくみ取ってくれたようだ。



ほっとしたように安堵の息を零すと、麗は胸をなでおろす。



一方、ひとしきりせき込んだ朔夜が立ちあがろうとするとすっと横から手が差し出され、驚いて目を見開きそちらを見ると、そこにはノアールが心配そうな表情で覗き込んでいた。





「大丈夫か?」

「え? う、うん……」




表情同様心配そうな問いかけに、少々面食らいながらも頷くと彼は淡い微笑を浮かべる。


控え目ながらも美しいそれを、思わず凝視する。


先ほどの冷たい視線が嘘のようだ。


少し戸惑いながらも差し出された手を握って、朔夜は立ち上がり……動きを止めた。


羨ましそうな視線でこちらを凝視する麗と視線があってしまったからである。


朔夜は無意識にさり気なく視線をそらし、ふぅとため息をついて瞳を閉じた。


美系が絡むと麗は恐ろしい。先ほどのことで再認識した朔夜は、ぽつりと言葉をもらす。




「……男好きもここまでいったら病気なんじゃあ……」

「――何か言った?」

「よしっ! 掃除ガンバロー!!」




じろりと睨まれ、朔夜はいつも以上に高いテンションで肩腕を付きあげる。


明らかにわざとらしいそれに、麗にじと目で睨まれながら彼女が柄にもなくせっせと掃除を再開した。




















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